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  麝 香(じゃこう)

 麝香はヒマラヤ山脈の南側の高地、北側のチベット高原、東南にのびる四川、雲南の山々、中央アジア盆地から天山アルタイ山脈そしてシベリアのバイカル湖に達する高原に生息するジャコウジカと呼ばれるシカの下腹部と生殖器の間にある香嚢(こうのう)から採れる動物性の香料です。「鹿の放つ香りが矢を射るごとく遠くまで届く」という意味で麝香と呼ばれたと言われています。英語では「ムスク」と呼ばれ、語源はサンスクリット語の「ムスカ」で「睾丸」を意味します。現在もムスクはジャコウジカの睾丸から採ると言う人がいますが、それは間違いです。ジャコウジカは哺乳類偶蹄目ジャコウジカ科に属し角はなく上アゴが発達し牡では歯の長さが10cmもあるものもいます。前肢より後肢の方が長くウサギのようは腰高で全体的に小型の鹿です。性格は臆病で警戒心の強い動物です。発情期になると雄はは雌を引き寄せる為と自分の縄張りを確保する為に香嚢の内面の分泌腺から強い匂いを発し木や木の切り株に糞と一緒に匂いをこすり付け、この匂いにたまたま引き寄せられた雌と結ばれるという習性を持っています。チベット高原や四川附近で採れるムスクをトンキンムスクといい最高級品とされています。日本では平安時代の薫物(たきもの)にすでに沈香などの香木といっしょに調合されていました。

 現在でも高級線香の中にわずかに入れる事により香りに甘みと広がりと持続力をもたらせてくれます。中国の最古の薬物書「神農本草経」に不老長寿の薬として重宝されているように我国でも強心剤として用いられて来ました。ただ価格は金よりも高く、又1930年代に乱獲した為、ジャコウジカが激減し、現在ワシントン条約により原産地の許可なしには輸入できなくなり、入手は非常に困難な状況です。1958年ごろ四川地方で人工飼育が行われるようになりましたが、採れる量は少なく、香りも弱く天然のものとは比べ物にはなりません。

 香水ではラストノートに必ず用いられ、香りに深み、厚み、幅、まろやかさ、甘さ、セクシーさ、やわらかさ、芳醇さを出してくれます。ただ現在市販されている香水ではほとんど化学香料のムスクで補われています。


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